📖 はじめに
「バカの壁」(著者: 養老孟司さん) の感想。
ただの感想である。考察ではない!ネタバレ込み!!
📘 この本について(概要)
物語の概要と、読んだ理由を簡単にまとめておく。
📝 あらすじ
物事の考え方について語られている。と思う…(内容が難しかったので要約するのも難しい)
⏱️ 読了までにかかった時間
- 6時間18分
何度も寝落ちしたので、実質は5時間30分くらいかもしれない。
❓ なぜこの本を読んだのか?
この本に興味を持った理由を書く。
平成で一番売れた本
2003年に発売され、平成で一番売れた新書。
多くの人の関心を集めた本には、一体どんな内容が書かれているのだろう?と気になった。
バカとは
タイトルにある「バカ」とは、どういう意味なのだろうか?
日常の会話で「バカ」はつい使ってしまう。いわばクリシェ(常套句)の一部になっている。
僕は関東人なので「バカ」を気軽に使う。妻に対してもつい「バカ」と言ってしまう(DVか?!)。言った直後に「そんな妻を選んだ自分がバカなのでは?」と考えてしまうこともある。
でも、僕が日常で使っている「バカ」と、この本で語られる「バカ」は同じ意味なのだろうか?と興味を持った。
そもそも、この本を手に取った時点で「自分はバカじゃない」と思っている自惚れもある気がする。ただ、過去を振り返るとやっぱり僕はバカだとも思う。
僕は本当にバカなのか?それとも「バカじゃない」と確認したいだけなのか?――その答えを求めてこの本を手に取った。
養老孟司さんに興味あり
養老孟司さんは、YouTubeでの対談を観て「独特の視点を持っている人だな」と思っていた。
僕は言語化が下手なので、ズバズバと論理的に意見を言語化できる養老先生の姿がカッコよく見えた。
しかも、医者で高齢なのに、普通なら避けそうなタバコをスパスパ吸う。そのギャップある姿にも魅力を感じた。
そんな養老先生が書く本は、どんな内容なのだろう?と興味を持った。
💭 感想まとめ
アラフォーのおじさんが好き勝手に感想を述べる。
僕には難しすぎて、本の内容を完全に理解できていないので、著者が読者に伝えたいこととは見当違いなことを書いているかもしれません!
🌀読後の感想
難しすぎて、ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』以来ぶりに、何度も心地よく寝落ちできる本だった(笑)。
- 内容を理解するのが難しい…。
- 1回読んだだけで「わかった」とは口が裂けても言えない。
- 書かれている時事ネタが古い。
- 今まで見たことがない考え方が多くて新鮮だった。
- でも、なんで平成で一番売れたの?という疑問も残った。
✅ 良かった点
- 著者の視点が僕とまったく違う。自分の教養・知識レベルでは到底知らない考え方に触れられて、いろいろな気づきがあった。
- ちょいちょい国の機関である庁系に文句を言った。と書いてあって、これが他には無いような文章なので面白かった。
- だいたい、恐れ多いのか書かないことが多いんだと思うけど、この著者は自分の正しさは例え国の機関だろうが何だろうが、忖度?遠慮せず?に伝える姿が痛快だった。
- でも、それが教授とかの知識人・学者の正しいあり方なのだろう。
- だいたい、恐れ多いのか書かないことが多いんだと思うけど、この著者は自分の正しさは例え国の機関だろうが何だろうが、忖度?遠慮せず?に伝える姿が痛快だった。
- ちょいちょい国の役所や官庁に対しても遠慮なく文句を書いていて、それが他の本にはない文章になっていて面白かった。
- だいたい恐れ多いのか、普通は書かないことだと思うけど、この著者は相手が国の機関だろうが関係なく、自分の正しさをズバッと伝える。その姿が痛快だった。
- でも、きっとそれこそが教授や学者の正しいあり方なんだろうな、とも思った。
- だいたい恐れ多いのか、普通は書かないことだと思うけど、この著者は相手が国の機関だろうが関係なく、自分の正しさをズバッと伝える。その姿が痛快だった。
❤️ 気になった点
- 2003年に発売した本なので、時事ネタが20年以上前になるので古い
- アラフォーの自分はギリギリ覚えていて、懐かしさがあった。
- もうし20代が読んだら意味がわからないと思う。
- 読めない言葉がたくさんあった。
- これは僕の活字離れのせいかもしれないけど…。
- 「兌換券」「放蕩息子」「傲岸不遜」「蓋然性」「白痴」など、読めなかった。
- 世代が違うから使う言葉も違うのかもしれない。
- 「赤線」なんて知らないし、成田闘争も僕の世代にはピンとこない。
- これは僕の活字離れのせいかもしれないけど…。
💡 学び・気づき
一神教と多神教
この本を通して、そもそも自分が一神教と多神教の違いを理解していなかったことに気づいた。
2023年にイスラエルとパレスチナの戦争が始まったとき、気になって調べて「ユダヤ教→キリスト教→イスラム教」の順で成立したことは知った。しかし、その時は宗教の歴史をなぞっただけで、思想や価値観の違いまでは理解していなかった。「日本とは神様が違うんだな」程度の認識しかなかったのだ。
さらに恥ずかしいことに、日本も一神教だと思い込んでいた。仏教の神が仏様だと勘違いしていたのだ。でも調べ直すと、仏様は神ではないし、仏教と神道もまったく別物だった。だからこそ「お寺」と「神社」が違うのだと、ようやく腑に落ちた。
生活の中でも気づけたはずだった。「お祖父ちゃんは亡くなって仏様になったのよ」という言葉は、一神教では成立しない。すでに神がいるのに、亡くなった人が神になるのは矛盾しているからだ。
また「八百万の神」についても、僕はずっと「八百万という名前の神様がいる」と勘違いしていた。実際は「数えきれないほど多くの神様」という意味だったのだ。
結局のところ、「バカの壁」そのものよりも、この本を通じて「自分は教養が足りていなかった」という事実を突きつけられた気がした(苦笑)。
「常識」と「正しさ」は違う。
感情的に受け入れがたいことがあると、つい「常識」を物差しに是非を判断してしまう。けれども、この本を読んで「常識=正しさではない」と改めて認識できた。
これまで僕は「そんなことはない」と思いつつも、都合のいいときだけ「常識=正しい」と解釈していた。つまり自分もバカだったわけだ(苦笑)。
世の中を見渡しても、この「常識=正しさ」という誤解はあふれているな、と実感した。
y=ax
35年以上生きてきて、残念な人も、素晴らしい人も見てきた。
同じ環境にいても、ある人は周囲を失望させ、別の人は周囲を魅了する。この違いは何だろう?経験?知性?と考えてきた。
その答えをシンプルに表現したのが、本書の「y=ax」だった。
式を知って、とても納得した。魅力的な人とは、きっとαの値が高い人なのだろう。僕も少しでもその値を高められるように努力したいと思った。
📖 各話ごとの感想
各章の感想を書いていく。
以下で引用する章タイトルは『バカの壁』(養老孟司 著)から引用。
感想・批評は僕自身のものである。
📘 第1章 「バカの壁」とは何か
「バカの壁」が何かは、正直読んでも理解できなかった…。
たぶん僕が普段「理解できないバカ」と思うのと、この本でいう「バカ」は全然違うのだろう。おそらく「考えの視野が狭い」という意味合いに近いのかな?と推測した。
一神教の「正しい存在はいる=正しいことが存在する」という考え方については、確かに論理的に考えると納得できた。こういう視点を言語化できる著者の凄さに感心した。
だから一神教の人々は、生きるため以上に「自分の正義(属する宗教の正しさ)」を追求して戦争するのか…と少し理解できた気がする。
逆にその視点で日本人の信仰を見直すと、ハロウィン(ケルト+アメリカ文化)、クリスマス(キリスト教)、正月(神道)、お盆(仏教)と全部やっている。外国人から見たら「なんて信仰心の低い民族なんだ」と思われても仕方ないなと納得した。
一神教の人が「正しいことは存在する」という前提で生きている。
この考え方は、今後キリスト教圏の人と話す時に頭に入れておかないといけない重要な視点だと思った。
📘 第2章 脳の中の係数
「y=ax」について深堀りして説明されている章。
恥ずかしながら「林野庁」という国の機関を初めて知った…。
そしてEQ(心の知能指数)についても書かれていた。僕はここ4〜5年で生まれた言葉だと思っていたが、実は20年前からあった概念だったらしい。
それなのに、社会にはほとんど広まっていない。みんな知らないまま20年も経っているのか…!と、その現実にガッカリした。
📘 第3章 「個性を伸ばせ」という欺瞞
著者は「個性を尊重する社会」への矛盾を指摘していた。
僕は「ゆとり世代」なので、このテーマが語られていること自体に時代を感じる。20年前の指摘なのに、現代はむしろ著者が危惧していた方向へ進み、ますます「個性を尊重する社会」になっている。これは正しい成長なのか?それとも間違った方向なのか?と不安に思った。
さらに「精神病院の患者の突飛な行動も個性に含まれてしまう」という一文は、笑ってしまった。医師である著者だからこそ書ける逸話だろう。
実際に社会に出てみると、企業が最初に求めるのは「個性」ではない。個性が強すぎる人は、むしろ浮いてしまい、いじめられたり排除されたりすることさえある。例えば、新人が上司や社長に最初からタメ口をきいたら「個性」ではなく「非常識」で片づけられてしまうだろう。
そう考えると「ゆとり教育」って本当は何だったのか?と改めて考えさせられる。著者が指摘するように、本来の個性は「身体能力」のようなものかもしれない、と納得した。
📘 第4章 万物流転、情報不変
人間を超えて「生物」という視点で深いテーマが語られていた。
同じものだと認識しているけれど、実際は別物。たとえば「昨日の自分」と「今日の自分」は細胞レベルでは違う存在だ、と書かれていて、ハッとさせられた。
そう言われてみると、日常生活の中で息子(2歳)が日ごとに新しい言葉を覚えていく姿を見ていると、確かに「昨日の息子」と「今日の息子」は別人のようだ。なるほど、と妙に納得してしまった。
📘 第5章 無意識・身体・共同体
本書の核にあたる重要な部分だと思ったが、正直に言うと難しすぎて何度も寝落ちしてしまった…。
ただ、途中に出てきた「ペンフィールドのホムンクルス」の図が強烈だった。異様に歪んだ人体の絵で、奇形の人間のように見えて悍ましく感じた。逆にそのインパクトで眠気が一気に吹き飛んだくらいだ。
📘 第7章 教育の怪しさ
東大の先生としての体験談が出てきて笑ってしまった。
「あの東京大学でも、こんな人間がいるのか…」と驚きだった。
まあ、僕自身もこの本に書かれているように「大きい」としか答えられないようなバカの側だと思う…。
でも、そんな学生を指導していて「受験制度そのものに問題があるのでは?」とか「もう面倒なんか見たくない」と思う著者の心情には強く共感した。僕が新人教育をしていたときの気持ちとそっくりだったからだ。
「こんな新人を採用しちゃって、採用方法に問題があるんじゃない?」
「社会常識から教えないとダメなの?もう知らんわ…」
そんなふうに思った記憶がよみがえった。日本最高峰の学習レベルである東大でさえ、指導する側の気持ちは同じなんだな、と感じて妙に納得した。
また「大きい」のエピソードで出てきた「現物から情報を起こしてくる」という話も印象的だった。
昔から自分が尊敬する「頭がいい人」は、他の人が気づかない細かい点に気づくものだと思っていた。例えば、一緒に飲食店に入ると「あそこの時計が傾いている。だから店主は性格が〜」と分析を始める社長とか。
まさにそれが「現物から情報を起こす」能力なんだと理解できた。言語化できてスッキリした。
📘 第8章 一元論を超えて
「金欲」について書かれていて、これが妙に腑に落ちた。
食欲や性欲は何千年も人間や動物が向き合ってきた欲だから、ある程度コントロールできるように進化してきた。でも「金欲」は近代社会が生み出した比較的新しい欲望で、遺伝子的な抑制が備わっていない。
だからこそ、お金で身を滅ぼす人が多いのだろう。
「お金の管理は生きる上で本当に大切だ」と改めて学ばされた。
📌 こんな人におすすめ
正直、難しすぎて「誰にでもオススメ!」とは言えない…。
むしろ「1回読んでも理解できない本をあえて読んでみたい人」に向いているかもしれない。
📝 まとめ
平成のベストセラーだけど、数字に見合うだけの価値は本当にあるのか?
読む前は「売れたけど中身は薄っぺらくてガッカリなんじゃない?」と1〜3%くらい疑っていた。
実際に読んでみると、僕にはまったくそうは思わせない内容だった。
いろいろな気づきがあり、読んでいて視野も知性も少し広がった気がする。
それでも、この難解な本がどうしてこんなにも売れたのかは理解できなかった。…タイトルのおかげ?!(笑)
1回読んだだけでは全体の1割も理解できていないと思う。
だからこそ、隙間時間に「つまみ食い」のように少しずつ読み返したい。
この本の後にも『壁』シリーズがいくつも出版されているそうなので、そちらもいくつか手に取ってみようと思う。