「成瀬は都を駆け抜ける」読了レビュー|三部作の最高の締めくくり

成瀬は都を駆け抜ける, 宮島未奈, 小説レビュー, 読書感想, 成瀬シリーズ, 京都, 滋賀県, 青春小説 読書
この記事は約18分で読めます。
スポンサーリンク

📖 はじめに

「成瀬は都を駆け抜ける」(著者: 宮島未奈さん) の感想。
ただの感想である。考察ではない!ネタバレ込み!!


📘 この本について(概要)

物語の概要と、読んだ理由を簡単にまとめておく。

📝 あらすじ

成瀬シリーズ第3作。大学生編。

⏱️ 読了までにかかった時間

  • 5時間49分

❓ なぜこの本を読んだのか?

過去2作が最高に面白かったから。

シリーズの完結編として発売された今作。
2025年に成瀬シリーズを読み始め、1年を通して楽しませてもらった僕としては、
2025年の締めくくりに、

「癖の強い主人公・成瀬あかりの物語の最後を見届けたい」

という気持ちが、どうしても止まらなかった。


📚 成瀬シリーズ三部作の感想


💭 感想・レビュー

アラフォーのおじさんが、好き勝手に感想を述べる。

🌀読後の感想

今回も面白かった。

普段は「読書は1日30分以内」とルールを決めているんだけど、
今回はどうせ面白すぎて止められないのが分かっていたので、最初から無視。

遅読の自分にしては、かなりあっという間に読了した。
年末でバタバタしていたから結果的に7日間かかったけど、時間があればもっと早く読み終わっていたと思う。

  • いきなり第3作から読む人は滅多にいないと思うが、第1作・第2作の積み重ねがあってこそ楽しめる内容
  • 相変わらず「気軽に読める面白さ」がある
  • 成瀬あかりの強烈なキャラクター性は、中学生から大学生になったことで少し落ち着いたが、芯はまったくブレていない
  • 物語の中心は成瀬だが、周囲に与える影響力の“圧”はやや弱まった印象
  • 第2作ではあまり描かれなかった大学生活が、今作ではしっかり描かれている
  • 地元感はかなり薄れ、キャンパスライフが物語の中心になっている
  • シリーズの締めとして、成瀬あかり個人の物語というより、「成瀬を取り巻く世界の終わり」を描いた作品だった

✅ 良かった点

まさに三部作の集大成。

第1作・第2作・第3作で積み上げてきた物語や人物関係が、きれいに集約されていく構成は本当にお見事で、作者の力量を強く感じた。

序盤では登場人物を増やしつつ、終盤でそのキャラクターたち――
そして第1作から第3作までの要素を、しっかり一本に束ねていく流れは、「本当に構成がうまいな」と素直に思った。

勝手な印象だけど、三部作ものって、どうしても途中でグダるイメージがある。
それだけに、この作品は見事に昇華し、まとめあげていたと感じる。

これはもう、脱帽だった。

❤️ 共感した点

今回は、正直なところ「強く共感した点」はなかった。

第1作では、成瀬あかりの「地元愛」に強く共感できた。
それが、このシリーズを一気に好きになった大きな理由でもある。

第2作では、その“共感軸”が少し下がり、
第3作では、さらに下がった印象だった。

今作は、感覚的には「成瀬の京都出張編」といった雰囲気に近い。

僕自身、京都の街に詳しいわけでもないし、大学生活も経験していない。
そのせいもあって、キャンパスライフを中心とした描写には、どうしても距離を感じてしまった。

第1作のような濃い地元感は薄れたけれど、
成瀬の「極める思考」や、淡々と挑戦を続ける姿を眺めているだけでも楽しかった、というのが正直なところだ。

💡 学び・気づき

京都民が羨ましい

  • 京都は「ミヤコ」とも読めるけど、タイトルの「都」は京都とかけているのだろうか?
  • 読んでいると、京都の地名や建物名が頻繁に出てくる。
    • 「デルタ」「大階段」って何?!
      知らないから、まったく脳内再生できない(笑)
  • 京都をよく知っていたら、もっと深く楽しめたはずで、
    知識がない自分が少し悔しくなった。

京都大学

  • 完全に個人的な話だけど、今年の僕の“気になる人物”は、なぜか京都大学出身者が多い。
    • 政治家(?)の石丸伸二さんのYouTube動画はよく見ているし、
    • 文芸評論家の三宅香帆さんの本やYouTubeもよく見ている。
      • この本の帯にコメントを書いているのも三宅さんだった。
    • そして、この成瀬シリーズ。著者の宮島未奈さんも京都大学出身。
  • 偶然とはいえ、今年の自分の関心と重なっていて、少し面白かった。

森見登美彦さん作品

  • 実は、1冊も読んだことがない。
  • 「実家が北白川」をもっと楽しむには、
    森見登美彦さん作品を読んでいる前提知識が必要だったのかもしれない、と思っている。
  • 『夜は短し歩けよ乙女』の存在は知っている。
    若い頃、「ASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットみたいな絵の本だな」と思った記憶がある。

ご飯はゆっくり噛んで食べよう

  • 完全に僕個人の話だが、かなりの早食いである。
  • 成瀬の咀嚼描写を読まされると、
    「自分ももっと噛んで食べないと…」と反省させられる。
  • 最近、アラフォーになって代謝が落ち、順調に太ってきているので、
    肥満対策のためにも、しっかり咀嚼して満腹中枢を刺激しなければならない。

📖 各話ごとの感想

各章の感想を書いていく。

以下で引用する章タイトルは『成瀬は都を駆け抜ける』(宮島未奈 著)から引用。
感想・批評は僕自身のものである。

📘 第1話 やすらぎハムエッグ

普通に失恋した大学生の物語。

成瀬という存在がいなければ、
かなり陰キャ寄りな女性が、ただ失恋しただけの話で終わっていたと思う。

正直なところ、驚きや分かりやすいオチは特になかった。

これは
「成瀬の性格が、失恋した少女を救った話」
と読むこともできるけど、

それ以上に、坪井さんの失恋を解決した、というよりも、
この先の物語のために、成瀬あかりが坪井さくらと出会った
という点のほうが、構成的には重要なエピソードに感じた。

のちほど宮島未奈さんのインタビュー記事を読んで知ったのだけど、
この話では、

「京都大学に入学できたからといって、人生が満たされるわけではない」

ということを描きたかったらしい。

なるほど、とは思ったものの、
正直なところ、僕からすると「京都大学に入った時点で勝ち組」に見えてしまう。

なので、そのインタビューを読まなければ、
この作者の意図には一生気づけなかっただろうな、とも思った。

この第1話は、
成瀬あかりの人物像を読者に伝えるためのエピソードだったと思う。

第3作の序章として、

  • 成瀬あかりはどんな人物なのか
  • どんな距離感で人と関わるのか

を、丁寧に提示する役割を担っている。

そういえば、第2作も似たような導入だったよな、と思い出す。

坪井さんがネットで成瀬の経歴を調べるシーン。
そして、成瀬と会話しながら「成瀬はこういう人物なのだ」と理解していく心理描写。

こうした積み重ねによって、
読者も自然と「成瀬あかり」という人物像を把握していく構造になっている。

表紙の着物は、この話のことだったんだな、とここで腑に落ちた。

別の話で明かされるけど、
その着物が祖母から受け継いだものだった、というのも良いエピソードだと思う。

京都と関東でネギが違う、という描写もあった。

僕は神奈川県民なので、ネギといえば白ネギ。
作中に出てきた青いネギは、正直あまりピンとこなかった(苦笑)。

そもそも、
成瀬に「失恋」という感情が理解できるのか?
という疑問も最初はあった。

でも、そこで島崎あかりの存在が出てきて、
「ああ、なるほど」と腑に落ちる。

何かを失うことに、性別は関係ない。
ただ、好きだった相手が男だったか女だったか、その違いがあるだけだ

ここで、島崎あかりが成瀬あかりにとって本当に特別な存在である、
と明言されるのも重要なポイントだと思う。

ただ一つ、気になったのは、
なぜ成瀬のアドバイスが「料理」だったのかという点。

健康のためには、まずご飯を食べる必要がある、
という理屈なのだろうか。

そのあたりも含めて、
成瀬らしい価値観がにじみ出た第1話だった。

📕 第2話 実家が北白川

正直、わからない単語が多かった。

京都大学というだけで、僕には完全に別世界だった。

言葉や前提知識のレベル差が大きく、正直、少し置いていかれた感覚があった。

「権化」「跋扈」「表彰」など、
聞き慣れない・理解しきれない漢字も多くて、
「ああ、使う言葉からして違うんだな…」と実感する。

青チャートも、恥ずかしながら知らなかった。
調べてみたら受験用の有名な参考書らしい。
そういう前提知識が、そもそも自分にはない。

先ほども書いたけど、
物語の主軸になる「森見登美彦さん作品」を1冊も読んだことがないので、
正直、ピンとこない部分がかなり多かった。

「黒髪の乙女」って何?
それを知っていたら、もっとこの話を楽しめたのだろうか(笑)。

最初は、主人公が男なのか女なのかすら分からず、
登場人物の名前も聞き慣れないものが多くて、
「これ、なんて読むんだっけ?」とページを戻る場面も多かった。
地味にその積み重ねがストレスで、少しイライラしたのも事実だ。

そんな中で、第2作とつながるスタンプラリーのネタが出てきて、
思わずクスッと笑ってしまった。

滋賀県民が京都民に対して言う
「水、止めたろか」ネタを初めて知ったのも面白かった。

僕の地元・神奈川県相模原市も横浜市に水を供給しているので、
横浜市にバカにされると「水止めたろか」ネタが存在する。

どこが元ネタなのかは分からないけど、
場所が違うだけで、似たようなネタが全国にあるんだな、と思って少し笑った。

物語の後半、みんなで外に出かけたシーンでの、
梅谷さんの「会長」に対する心理描写がとにかく面白かった。

「会長を突き落としたい」とか、
「他を見習え!!」とか、
あまりにもリアルな心のツッコミで、声が出そうになる。

この第3作の中で、いちばん笑った場面かもしれない。

それにしても、会長が無能すぎる…。

どっちが「黒髪の乙女」なのかも理解していなくて、
梅谷さんの心中を思うと、本当に気の毒になる。

まあ、僕はそもそも「黒髪の乙女」という存在を理解していないので、
「黒髪の乙女と出会うこと」が、どういう意味を持つのかも分からなかった。

会長が成瀬を好きになる、ということなのか?
でも、西浦さんもいるし、それっぽい描写もなかった。
最後までよく分からなかったキャラクターの一人だ。

一方で、大曽根さんはめちゃくちゃ良いキャラだった。

第3作を通して、ずっとイケメン。
それなのに、どの女性にも手を出さないのが良い。
(作風的にも、女性関係に踏み込む描写は合わないと思う。)

作中の「良心」と言っていい存在だと思う。

特に物語の終盤、
梅谷さんがせっかく成瀬を紹介したのに、
失礼な発言をした会長を叱るシーンが本当に良かった。

セリフが完璧すぎて、イケメンすぎて、普通に感動してしまった。

会長の望みを叶えるために動いた後輩と、
会ってくれた女性二人を、まずきちんと称えるところがいい。

その上で、怒りながらも、
「自分は会長の金持ちなところが羨ましい」という、
自分の弱み・コンプレックスを正直に吐露する。

他人を守りながら、相手に合わせるために、
自分の情けなさもさらけ出せる。

……いや、有能すぎるだろ。

こんな友達がいる会長が、正直ちょっと羨ましい。
これは一生大切にしたほうがいいタイプの友達だと思う。

他には、会長に質問されても、
「たくさん試して、1回できればいい」と臆せず言い切る成瀬。

このブレなさが、成瀬らしさをより際立たせていて、とても良かった。

この物語では、梅谷さんたちが
「森見登美彦さん作品」に強く魅了されているけれど、

将来はきっと、
「成瀬シリーズ」が同じ立場になって、
「成瀬シリーズ」に魅了される京都大学生が現れるんだろうな、と思った。

そのときは、「達磨研究会」じゃなくて、
いったい何研究会になるんだろうか(笑)。

📗 第3話 ぼきののか

YouTuberネタの回。

最近、僕はポケモンの最新作
『Pokémon LEGENDS Z-A(ポケモンZA)』をプレイしていた。

そのストーリーの中にも、YouTuber的なキャラクターが登場する。

ゲームの世界だけでなく、
この小説の中でもYouTuberが自然に描かれていて、

「ああ、もう現代の作品(芸術・コンテンツ)にとって、
YouTuberという存在は切り離せないものなんだな」と感じた。

ニコニコ動画やTwitch、YouTubeの生配信を、
自分もたまに見ているおかげで、描写がかなりリアルにイメージできた。

「あ、これ分かるわ」という感覚が多くて、
描写が上手いな、と思った理由も単純で、頭の中でスッと映像化できたからだ。

生配信とチャットの掛け合いもリアルで面白い。

僕自身も、生配信のチャットに書き込んで、
配信主に反応してもらった経験があるので、
妙に共感してしまった。

今回も最初は、
「この人物、男なのか女なのかどっちだ?」
と少し混乱する。

そして題材は、まさかの簿記。

正直、簿記が分からないと、
この話はかなり分かりづらいだろうな、と思った。

幸い、僕は簿記3級くらいは取得しているので、
なんとなく雰囲気は理解できた。

物語は、案の定、炎上が始まる。

まあ、YouTuberネタなら、
炎上しないと物語的に“もったいない”よな、とも思う。

そこで成瀬が紹介した助っ人が、
まさかの第2作に登場したヒッチハイクの城山くん。

これは普通に笑った。

正直、島崎さん以外のキャラは、
「名前だけ登場して、会話には絡んでこない存在」
だと思っていたので、

物語にがっつり関わる人物として再登場したのは、
かなり意外だった。

炎上すらもネタにしてしまおう、という発想。

この切り替えの早さと図太さは、
やっぱり京都大学生という設定ならではだな、と思う。

地味に面白かったのが、
簿記の試験を受ける仲間が増えていく展開。

第1話・第2話で成瀬に関わった人物たちまで、
自然に合流してくるのが良い。

とはいえ、
僕だったら、こんな京都大学生だらけの環境で
一緒に簿記の試験を受けるのは、絶対に嫌だ(笑)。

そもそも、簿記2級は簡単な試験じゃない。

ネットで調べればすぐ分かるけど、
初心者なら300時間前後の勉強が必要と言われている。

それをサラッと合格してしまうのだから、
やっぱり「京都大学生」という設定がなければ、
成立しない物語だな、と改めて思った。

物語のラストでは、
それまで反省していなかった「ののか」が、
子どものファンの存在によって改心していく。

子どもの純粋さって、
人を正しい方向に戻す力があるよな、と少ししみじみした。

そして何より驚いたのは、成瀬の記憶力。

チャットに書き込んでいた人物のことまで覚えているとは、
もう化け物レベルである。

作者は、
成瀬というキャラクターの長所を、
本当に上手く物語に落とし込んでいるな、と感心した。

📙 第4話 そういう子なので

お母さん視点の物語。
これは正直、予想外だった。

ただ、第2作で父親視点の話があったことを思い出すと、
「じゃあ母親視点もあっていいよな」とも思うし、
むしろ、ここまで来たらやらないほうが不自然だったのかもしれない。

成瀬の遺伝子の半分は母親なわけで、
父と母、両方の視点がそろってこそ、
成瀬という人物像が完成する、という納得感があった。

草津って滋賀県にもあるのね。
完全に群馬だと思い込んでいた。

日野菜(ひのな)も知らなかった。
名前を見ても、どんな野菜なのか全然イメージできなかった。

成瀬が「ぐるりんワイド」に映っていた経緯も、
そういえばそんな話あったな、と記憶を掘り起こされる。

祖母が亡くなっていたことも、ここでしっかり効いてくる。

たしかに、人は「死」が絡むと、
後悔や言えなかったことを一気に思い出すものだよな、と思う。

第3話で「象が好き」と答えていたエピソードが、
この第4話で回収されるのも良かった。

こういう、さりげない伏線が、
後から効いてくる感じが、成瀬シリーズの醍醐味だと思う。

クスクスと笑ってしまう。

第2作と第3作は時系列が少し混ざっているので、
正直、成瀬の「成長」をそこまで強く意識していなかった。

でも、母親が
「成瀬が空気を読むようになってきた」
と感じている描写は、読者に対しても、
成瀬の成長をきちんと伝えてくれている。

たしかに、中学・高校時代の成瀬なら、
「死んだら言えない」とか、
真顔で言い切るキャラだった気がする(笑)。

ただ、その真顔で言ってしまう感じこそが、成瀬の魅力でもあった。

成長することで協調性は増すけれど、
その分、尖った個性はどうしても削れていく。

そう考えると、このシリーズが「大学生編」で終わるのも、
ある意味では自然で、しょうがない選択なのかもしれないな、と考えさせられた。

ラストで、母親の妹が投稿した内容が、テレビで読み上げられるオチもお見事。
読後感まで含めて、気持ちよく読み切れた一編だった。

母親の思い出と、娘の記憶がリンクしていく構成も良い。

祖母が亡くなったときにテレビに映らなかったことや、
三者面談での一言が、ここで結びつくのも綺麗だった。

母親が口にした、タイトルにもなっている言葉。
あれが、成瀬というキャラクターを形作っていたのだな、と、
ひとつの「答え合わせ」をした気分になった。

父親視点も面白かったけれど、
母親視点も、同じくらいしっかり面白い一編だった。

📘 第5話 親愛なるあなたへ

残り2話、
「さて、今回は誰が主人公なんだろう?」と思って読み始めたら、
まさかの第1作のかるた編で登場した 西浦さん。

これは完全に予想外だった。

でも、読者目線で考えれば、
個性が強すぎる成瀬の“恋愛”を描くなら、
成瀬本人ではなく「成瀬に恋をする側」から描くほうがしっくり来る。

成瀬からの恋ではなく、成瀬への恋を描いているところが、
いかにもこのシリーズらしくて良い。

手紙を送り間違えて、必死に探していたら、本の中から1000円札を見つけて嬉しくなる。
この感覚が、妙にリアルで、素直に共感できた。

てっきり、「1話まるごと手紙を回収する話かな?」
みたいな、ありがちな展開を想像していたけど、
まったくそんなことはなかった。

あっさりと、成瀬から手紙を返してもらう展開には驚いた。

その後の、西浦さんによる成瀬の尾行。
正直、「まじで変態だろ……」と思った(笑)。

ただ、おじさんと一緒に階段を上がったり、麻雀大会に参加したりと、
西浦さん視点で描かれる成瀬の行動が、とにかく意味不明で、そこがまた面白い。

西浦さん視点になると、
成瀬という存在が、より一層“謎の生き物”になる。

「歩くのが異様に早い」という描写も、
自分の中にある成瀬のイメージと完全に一致していて、
思わず笑ってしまった。

成瀬が、西浦さんの手紙を声に出して読むシーンも、
「いや、これ絶対やるだろ」と思えるくらい成瀬そのもの。

ここは本当に声を出して笑ってしまった。

そして、ぼきののかが再登場。

しかも、まだ一緒に配信している。
これも普通に笑った。

第3話の印象では、
「自分の利益のためなら何でもやりそう」
「あまり他人はフォローしなさそう」
というキャラだと思っていたけど、全然違った。

西浦くんの恋心を察知して、
むしろ積極的に恋愛をフォローしている。

気が利くし、普通にめちゃくちゃ良いやつじゃないか。

このあたりで思ったのが、この物語、女性陣の勘が総じて良い。

後半に出てくる坪井さんも気づくし、
のちの話では島崎さんも気づく。

普通、1人くらい鈍感キャラがいそうなものだけど、
そこは主人公である成瀬の役割なのだろう。

対比として、周囲のキャラがしっかり察している構図になっている気がした。

ガイドブックの「付箋100巡り」の話が、
ここでさりげなく出てくるのも好きなポイント。

こういう、地味だけど嬉しい伏線回収が多い。

年末年始の予定を聞かれて言い淀むシーンも、
第2作と繋がっていてクスッとくる。

第2作のクレーマーの話まで引っ張ってくるのも笑った。

成瀬本人はクレーマーだと思っていないけど、
第三者視点だと「クレーマー扱い」されている。

この、成瀬自身の認識と、周囲からの見え方のズレこそが、
このシリーズの面白さだと思う。

京都の土地勘がない自分には、後半の忘年会シーンが少しイメージしづらかった。

ラストのオチについて。

最初は、成瀬の反応は「ごめん」だと思った。

でも、手話の意味が気になって読み返してみると、
ぼきののかが西浦さんに「あなたが好き」の手話を教えている場面より前に、

成瀬が見せた「手の甲に手刀を振り下ろす」動作は、
作中では「ありがとう」の手話だと説明されている。

つまり、成瀬は「ありがとう」と返していた、という解釈になる。

そう考えると、その後の成瀬の楽観的な態度にも、しっかり納得がいく。

もし、あれが「ごめんなさい」だったら、
西浦さんは、あの後の桃鉄会に
普通に参加できていなかったはずだ。

……なんだか、この文章を書きながら、
国語のテスト問題を解いている気分になってきた。

国語は5段階評価で2とか、そのレベルだったので、
こういう解釈問題は、正直あまり得意じゃない。

それでも、
「ありがとう」という返答だったと考えると、
この話はとても綺麗に終わる。

📕 第6話 琵琶湖の水は絶えずして

最終話は、島崎さん視点。
これは素直に「妥当だな」と思った。

ここで主人公である成瀬視点にする選択肢もあったとは思うけど、
そもそもこの成瀬シリーズは、第三者目線で描かれる物語だ。

そう考えると、
第三者目線の代表格とも言える島崎さんが語り手になるのは、
かなりしっくりくる。

冒頭、健康第一なはずの成瀬が、
まさかの入院中という状態で始まるのもインパクトが強い。

しかも、成瀬が「もみゃもにゃ」言っている。
最後の最後で、こんな一面を見せてくるとは思わなかった。

最終話にふさわしく、
第1作から第3作までのキャラクターたちが、
あらゆる形で総登場してくる。

「全部が収束していく」感じがあって、
読んでいてとても気持ちが良かった。

前話の第5話で、成瀬がなぜ階段を走っていたのか、
正直よく分からなかったけど、ここでちゃんと伏線回収されていて笑った。

「おじさんって誰?」と思っていたら、まさかの第1作の人たち。
ああ、そう繋げてくるのか、と納得。

琵琶湖から京都へ向かう展開も、完全に予想外だった。

しかも、調べてみたら、本当にこういう大会が実在するらしい。

京都といえば、伝統とか文化とか、そういうイメージが強かったので、
こんなネタ寄りのイベントがあるというギャップが、逆に面白かった。

これ、京都では有名なイベントなんだろうか?
と、ちょっと気になった。

第1作のヌッキーが出てきたり、
第2作のクレーマーさんが回収されたりと、本当に容赦なく拾ってくる。

「クレーマーをしている主婦だ」
みたいな書き方を平然とするのも、
文章としてどうかしている(笑)。

こんな表現を許容できる小説、後にも先にも、この成瀬シリーズくらいじゃないだろうか。

同じ観光大使である篠原さんが、しっかり成長しているのも、今作一番の驚きだった。

成瀬が不在なら、もっと感情的に怒るのかと思っていたけど、
そんなことはなく、島崎さんをフォローし、最後はきちんと譲る。

大人すぎる。

成瀬と関わることで変化し、成長したのだろうけど、
それにしてもカッコよすぎる。

「島崎さんの一生ついていきます姉さん」という気持ち、
あれはもう、読者全員の総意だと思う。

第2作の登場時は、「なんだこのキャラは?」と、正直マイナスな印象で始まった。

それが、物語を読み終えた今では真逆。
めちゃくちゃ良いキャラだった。

品のあるお嬢様は、
結局なんでもできるんだな、と妙に納得してしまう。

島崎さんの心理描写も、とても良かった。

「他人には、生きているだけでいいと言うのに、自分だけは頑張りすぎていないか?」

あのあたりの独白は、かなり刺さるものがあった。

島崎さんが「200年生きる」という話題の場面で、
成瀬が一瞬言い淀んだとき、
病気のせいで「200年は無理なんじゃ…」と
弱気になったのかと思った。

でも、そんなことで軸がブレる主人公ではなかった。

「400年生きる」。

この一言で、ああ、これでこそ成瀬だな、と腑に落ちた。

最後まで、読者の予想を軽々と超えてくる。

令和に登場した主人公の中でも、間違いなく最強クラスだったと思う。

三部作の最終話として、全キャラクターをきちんと登場させ、
しかも破綻させずにまとめきったのは、本当に見事だった。

3作という適切なボリュームで終わらせたからこそ描けた、
きれいなフィナーレだったと思う。

読み終えてふと、「実の主人公は成瀬ではなく、島崎さんなのでは?」と思ってしまった。

でも、島崎さん=第三者として成瀬を見届ける存在、
つまり、読者目線の代弁者だと考えれば、この構図もすごく納得がいく。

僕らも、200年ではなく、400年。

成瀬の物語を、心の中で見届け続けていくしかないのかもしれない(笑)。


📝 まとめ

最高のフィナーレだった。
三部作として、とても良い締めだったと思う。

今作も、成瀬を取り巻くキャラクターたちが織りなす日常劇に、
たくさん笑わせてもらった。

2025年の年末、12月に読んだこともあって、(まだ20日以上は残っているけれど)
一足先に、2025年を良い感じで締めくくらせてもらったような気分になった。

成瀬シリーズを、もう新しく楽しめないと思うと、
正直、ちょっと寂しい。

でも、芯がぶれそうになったときには、
成瀬の姿勢や考え方を思い出して、自分を立て直したいな、と思う。

気軽に読めて、しっかり面白い。
いろいろな人におすすめしたくなるシリーズだった。


📚 成瀬シリーズ三部作の感想


タイトルとURLをコピーしました