📖 はじめに
「エベレストは居酒屋です」(著者: 渡邊直子さん) の感想。
ただの感想である。考察ではない!ネタバレ込み!!
📘 この本について(概要)
物語の概要と、読んだ理由を簡単にまとめておく。
📝 あらすじ
著者・渡邊直子さんの生い立ちや、登山に対する価値観、これまでの出来事などが語られる。
⏱️ 読了までにかかった時間
- 4時間30分
文体はかなり軽めだった。
僕は4時間30分ほどかかったけれど、読むのが早い人なら2時間くらいで読み終わるかもしれない。
🎦 本の内容について
ぶっちゃけ、書籍の4分の1くらいは、以下の動画でも同じようなことが語られている。
「この動画をもとに本を書き起こしたのかな?」と思ってしまうくらい、内容が重なっていた。
逆に、本の内容をもとに動画で話している可能性もあるし、もしかしたらどこかに両者の関係について書かれているのかもしれない。
ただ、そこまで調べる気力はなかったので調べていない。
本はかなり軽めの文体だった。
だからこそ、文章で読むより、本人が実際に話している動画の方が感情が伝わってきて良いかもしれない。
僕は本を読んだ後にこの動画を聴いた。
本を読んでいるときは、ところどころ否定的に受け止めていた部分もあった。
でも、動画では本には書かれていなかった細かい話や、本人の感情まで伝わってきた。
そのせいか、本ではあまり響かなかった内容なのに、動画では思わず泣いてしまった部分もあった。
同じ内容でも、文章で読むのと本人の声で聴くのとでは、受け取り方がかなり変わるんだなと思った。
❓ なぜこの本を読んだのか?
きっかけは、本書の一部が抜粋されたニュース記事を読んだことである。
その内容がかなり奇抜で、興味を持った。
特に「登山中にキャンプ地へ置いていかれた」という話が強烈だった。
僕自身は登山をしない。
それでも、エベレストやK2などの8000m峰に関する記事や動画は、なぜか気になって見てしまう。
ただ、見れば見るほど、「どうして、こんな厳しそうな環境に自分から行って登るんだろう?」という疑問も強くなる。
なので僕は、どちらかといえば登山家に対して、少し懐疑的なタイプである。
YouTubeやテレビ番組、ネット記事などで登山について見ることはあっても、実際に高所登山をしている人が書いた本は読んだことがなかった。
切り抜かれた面白い場面だけではなく、本人がまとまった形で書いたものを読めば、もう少し理解できるかもしれない。
批判したり疑問を持ったりするなら、ちゃんと相手側の話も知っておかないとね。
そんな気持ちもあって、情報収集も兼ねて読んでみることにした。
💭 感想まとめ
アラフォーのおじさんが好き勝手に感想を述べる。
🌀読後の感想
- いろいろとスゴイ経験が書かれているはずなのに、出来事の描写があっさりしていて、著者の感情にはあまり共感できなかった。
- ネパールの山々は「自分が素になれる場所」のように書かれていたけれど、僕にはあまり共感が湧かなかった。もしかすると、僕にはすでに素でいられる場所があるからなのかもしれないし、そもそも普段からかなり自由に生きているからなのかもしれない。
- シェルパとの関係についても、かなり親しい関係のように書かれている。ただ、その関係性の描写が少しあっさりしているので、ところどころ「本当にそこまで親しい関係なのかな?」と疑いたくなってしまった。
✅ 良かった点
- 「シェルパ」について知れた。この本を読むまでは、8000m峰などで登山家を支える職業名だと思っていたけれど、実際には民族名だと初めて知った。
- 8000m峰の登山がどのように行われているのか、その一部を知れたのも面白かった。ベースキャンプなどは、もっと過酷で殺伐とした環境を想像していたので、綺麗な部屋の写真を見て驚いた。
❤️ 気になった点
読み終わって、この本は自伝というよりも、著者がこれから行う事業の宣伝も兼ねているのかな、と思った。
最後の方では、ネパールに住みながら、ヒマラヤ登山を案内するような活動についても書かれていた。
もちろん、自分の本を使って何を伝えるかは著者の自由である。
ただ、自分としては少し期待外れだった。
僕はエベレストをはじめとした8000m峰の登山について、もう少し詳しく知りたくてこの本を手に取ったからである。
本の内容が悪いというより、僕がこの本に期待していた内容とは少し違った。
だから、少し受け入れづらく感じたのかもしれない。
💡 学び・気づき
生命が関わる登山をする人たちは、みんながお互いの命のために協力しながら登っているのだと思っていた。
でも実際には、お金や記録など、それぞれの事情や欲のために行動する人もいる。
そこは少し驚いた。
極限状態だからこそ助け合う、という単純な世界ではないんだなと思った。
また、著者の経験や感情自体は書かれているのだけれど、出来事の描写がかなり概略的で、僕には共感しきれない部分が多かった。
「もう少し詳しく書いてほしいな」と思う場面も多かった。
意図的に詳細をぼかしているのか、それとも本業が看護師さんなので、文章で細かく伝えることにはあまり慣れていないのかは分からない。
まあ、仮にもっと詳しく書かれていたとしても、そもそも僕自身が山に登ったことがないので、どこまで共感できたかは分からないけどね。
ただ、こうやって実際に経験した人の文章を読んでみると、改めて小説家ってすごいんだなと思った。
読者自身は経験したことがない出来事でも、文章だけでその場面を想像させて、感情移入までさせる。
文章で他人に自分の体験や感情を伝えるのって、やっぱり難しいんだなと気づいた。
📖 各話ごとの感想
各章の感想を書いていく。
以下で引用する章タイトルは『エベレストは居酒屋です』(渡邊直子 著)から引用。
感想・批評は僕自身のものである。
📘 第1章 ヒマラヤで学んだ「死なないための生き方」
まず、金持ちの話がすごすぎる。
標高7000mでドレスを着て写真を撮るとか、頭がイカレているのでは?と思ってしまった。
もちろん本人たちにとっては、それだけお金をかけてでもやりたいことなのだろうけど、僕にはまったく理解できない世界だった。
ピルを飲めないなど、登山中の薬の制限について書かれていたのも面白かった。
こういう話は女性ならではの事情で、男性の僕にはなかなか想像できない。
また、「登山って、なんで夜中から登るんだ?」と以前から疑問に思っていたけれど、太陽の有無などが関係していると知って勉強になった。
こういう8000m峰ならではの具体的な話がたくさん書いてある本なのかな、と思った。
ただ、振り返ってみると、こういう情報はほとんど第1章に集中していた気がする。
記録を優先するあまり亡くなってしまう人がいるなかで、著者が8000m峰14座の登頂を達成できた理由の1つとして、「看護師だから、記録より命を優先する」という考え方が紹介されていた。
これはかなり理解しやすかった。
動画のインタビューでも、著者は自分のことを「登山家ではない」というような話をしていた。
むしろ、その距離感こそが14座登頂につながったのかもしれないなと思った。
ただ、少し皮肉にも感じた。
「登山家」と名乗らず、登山だけを人生の中心に置いているわけでもない人が14座登頂を達成する。
一方で、本当に「登山家」として生きてきても、そこにたどり着けなかった人もいるはずである。
もちろん、肩書きや思いの強さだけで結果が決まるわけではない。
自然が相手だからこそ、実力だけでなく、そのときの状況や判断、運など、いろいろな要素が絡むのだろう。
そう考えると、「登山家」という言葉ひとつ取っても難しいなと思った。
2023年シシャパンマ遠征
他の登山家さんのYouTube動画を見ていたら、「あれ、なんか既視感があるな……」と思う内容が出てきた。
よく見てみると、この本に書かれていた2023年のシシャパンマ遠征と同じ出来事について語られていた。
最初は、「この動画の人と著者が一緒に登っていたのか?!」と思って調べてみたけれど、そういうわけではなかった。
ただ、動画の方が当時の状況をかなり詳しく語っていて、本で読んだときよりも怖さが伝わってきた。
📘 第2章 エベレストに向かう私ができるまで
この章では、著者の生い立ちについて語られていた。
いじめを受けたことも書かれていて、「まあ、そういうこともあったのかもしれないな……」と思ってしまった。
以前どこかで、「いじめは集団の平均から大きく外れている人が対象になりやすい」という話を聞いたことがある。
著者のように、子どもの頃から山登りなど周囲と少し違うことに夢中になっていた人は、変わった人として見られやすかったのかもしれない。
もちろん、これは「いじめられても仕方がない」という意味ではない。
僕はいじめを肯定するつもりはまったくないし、ない方が良いに決まっている。
ただ、自然を相手にする登山の世界なら、学校のようないじめとは無縁なのかなと思っていたので、この本を読んでそうでもないと知ったのは少し衝撃だった。
あと、「ラボ・パーティ」という名前が出てきたことにも驚いた。
去年、知人の知人にラボ・パーティに参加している人がいた。
活動内容を聞いたことがあるのだけれど、自分のこれまでの生活や価値観からすると、かなり馴染みのない内容が多かった。
正直、「宗教みたいなものなのかな?」と思ったことすらある。
調べると「宗教」という言葉が検索候補に出てくることもあるけれど、著名人や宇宙飛行士なども参加経験があるらしく、少なくとも宗教団体というわけではなさそうだった。
とりあえず、自分にはよく分からなかった団体の名前が、この本に突然出てきたことに驚いた。
そして、著者がその活動に参加していたと知っても、なぜかあまり違和感はなかった。
妙に納得してしまった。
本の中では、看護師は気が強く、言いたいことをはっきり言う人が多い、というような話も出てきた。
たしかに、命に関わる現場だからこそ、曖昧にせず、自分の意見をはっきり伝えることは重要なんだろうなと思う。
看護師が気が強いというのは、僕自身、何人もの看護師にフラれてきたので身をもって知っている……。
また、海外は日本よりも自分の意見をはっきり伝える文化が強い印象がある。
僕も外国人と遊んだり、一緒に仕事をした経験があるので、その感覚はなんとなく分かる。
そう考えると、看護師として培われた「はっきり意見を伝える力」は、海外の人たちとやり取りする上では、かなり大きな長所として働いているのかもしれない。
📘 第3章 シェルパとの生活で変わった人生観
この章では、シェルパについて語られている。
先ほども書いたけれど、「シェルパ」が職業名ではなく民族名だと知ったのは驚きだった。
また、名前が曜日で決まるという話も出てきた。
以前、ネパール周辺の国の人と仕事をしたときに、「名前は誕生日で決まる」と聞いたことがある。
ネパール周辺には、そういう文化や風習があるんだなと少し納得した。
この章では、いろいろなシェルパの凄さも語られている。
ただ、僕にはその凄さがいまいち伝わってこなかった。
かなり雑に言うと、
「あの人はすごい」
「速い」
「強い」
という説明が続く感じで、具体的にどれほど凄いのかがピーンと来なかった。
「8000m峰14座を登頂したメンバーの1人」と書かれていても、山に登らない僕からすると、「いや、8000m峰を1座登っただけでも十分すごいんだけど……」となってしまう。
凄さの比較ができるほど、自分に登山の知識がないというのも大きいと思う。
著者は文章を書くことを本業にしているわけではないので、ある程度は仕方ないのかもしれない。
ただ、シェルパの凄さが語られれば語られるほど、なぜか僕の気持ちは少しずつ冷めていってしまった。
例えるなら、「ねえねえ、この前こんなことがあって、めちゃくちゃ面白かったんだよ!」と友達に話したのに、
相手がまったく笑ってくれず、「あれ、滑ったな……」と心の中で感じるような感覚に近い。
著者は本当に「この人たちはすごい」と思って書いているのだろう。
でも、その凄さを受け取る側の僕には、うまく届かなかった。
改めて、自分が感じた「すごさ」を文章で他人に伝えるのって難しいんだなと思った。
📘 第4章 生死の境目から私が日本に帰れたワケ
ネット記事でも読んでいた、キャンプ地に置いていかれた話が、この章ではさらに詳しく書かれていた。
著者はシェルパに裏切られてショックだった、と書いている。
そりゃあ、命がかかっている状況で置いていかれたらショックだろうな、とは思う。
ただ一方で、「シェルパ側にも生活があるし、仕事として動いている以上、事情はあるよな……」とも思ってしまった。
もちろん、著者も相手を100%悪者として責めているような書き方ではなかった。
そして、置いていくシェルパがいる一方で、助けてくれるシェルパもいた。
そこを読んで、「結局、シェルパという民族だからどうこうではなく、人それぞれなんじゃないか?」と僕は思った。
著者がシェルパをとても好きで、良い関係を築いてきたと感じていることは伝わってくる。
ただ、読んでいる側としては、お金が絡む描写が出てくるたびに、少し冷めてしまった。
「親しい仲間」というより、仕事として成り立っている部分もかなり大きいのでは?
と、どうしても懐疑的に見てしまった。
もちろん、これは本を読んだ僕の感想である。
実際の著者とシェルパたちの関係は、当人たちにしか分からない。
ただ、著者が「シェルパについてもっと知ってほしい」と語る部分には、僕はそこまで肯定的な気持ちにはなれなかった。
むしろ、この章を読んでいて怖かったのは著者の方だった。
あれだけ危険な目に遭って、死にそうな経験までしているのに、また山に登ろうとする。
しかも、それを後から笑い話のように語っている。
「心が広い」とか「前向き」とかいうより、「そこまでして、また登るのか……」という怖さの方が強かった。
特にそう感じたのが、4座連続登頂への挑戦だった。
本ではマネジメント力の話として紹介されていたけれど、僕は読んでいて少し引っかかった。
大前提として、支払ったはずのお金が支払われたことになっていなかった、という問題があったことは理解している。
ただ、その状況で登山を続けるために、シェルパの靴やiPhoneを預かるような行動までしていたと書かれていて、
「そこまでして山に登りたいのか……」と、著者の執念に少し怖さを感じた。
シェルパ側や会社側だって、お金が確認できないなら動きたくないだろう。
まして、第1章に出てきたようなお金持ちの顧客もいる世界なら、支払いが不安定に見える人を警戒するのも分からなくはない。
今まで信頼関係があったとしても、信頼は永遠に保証されるものではない。
人によって価値観も違うし、状況次第では一気に崩れることもあると思う。
だから、
「これはマネジメント力の話だけで片付けていいのかな?」
「そもそも、資金面の準備不足という側面もあったのでは?」
という疑問が残った。
看護師として働きながら登山費用を稼いできた努力は、純粋にすごいと思うし尊敬する。
ただ、支払いのトラブルについては、「もう少し資金に余裕があれば防げた部分もあったのでは?」とも思ってしまった。
この章は、著者の行動力のすごさよりも、その執念の強さに圧倒された章だった。
📘 第5章 そしてこれから ヒマラヤ流メンタルクリニック
著者は現在、看護師ではなく、ヒマラヤ登山を案内するサービスを行っているらしい。
だから最近、本を出版したり、メディアへの出演が増えたりしているのかな?と思った。
この章を読んでいるとき、僕は完全に勘違いをしていた。
「エベレストは簡単に登れる」みたいなことが書いてあると思い、
「本当かよ?! 8000m峰だぞ。そんなわけないだろ!」と、かなり否定的な気持ちで読んでいた。
ところが、改めて読み返してみると「エベレスト」ではなく「ヒマラヤ」だった。
完全に僕の読み間違いである。
僕の低知能な脳内では、「ヒマラヤ = エベレスト」になっていた。
申し訳ない。
第3章あたりから、かなり懐疑的な目でこの本を読んでいた。
そのせいで「どうせまた変なことを書いているんだろう」という先入観が入り、こんな読み間違いをしてしまったのかもしれない。
疑って読むことも大切だけど、疑いすぎると今度は自分の方が間違える。
ちょっと反省した。
📝 まとめ
エベレストのような8000m峰に登る人の気持ちは、正直よく分からない。
この本を読めば少しは理解できるかな、と思っていたけれど、やっぱり僕には理解できなかった。
たぶん、これは実際に8000m峰を登ってみない限り、完全には分からない感覚なのかもしれない。
この本を読んでいる最中に、ちょうどネパールで大規模な洪水が発生した。
山で雨が降っていないのに洪水が起きることがあるなんて思ってもいなかったので、かなり驚いた。
原因について調べていると、登山などの人間活動が氷河に影響する可能性がある、という趣旨の記事も見かけた。
もちろん、それが今回の洪水の原因なのか、本当にどこまで影響しているのかは僕には分からない。
ただ、第1章でベースキャンプの設備がかなり快適になっていることを知ったばかりだったので、
「こういう登山サービスの発展も、少しは自然環境に影響しているのかな?」と考えてしまった。
登山家の気持ちは最後まで理解できなかったけれど、8000m峰の登山サービスの現状や、「シェルパ」という民族について知れたのは純粋に面白かった。
自分ではなかなか触れることのない世界を知れた、という意味では、読んで良かった本だったと思う。



