📖 はじめに
「成瀬は信じた道をいく」(著者: 宮島未奈さん) の感想。
ただの感想である。考察ではない!ネタバレ込み!!
📘 この本について(概要)
物語の概要と、読んだ理由を簡単にまとめておく。
📝 あらすじ
成瀬シリーズ第2作。高校3年生から大学1年生編。
⏱️ 読了までにかかった時間
- 4時間46分
❓ なぜこの本を読んだのか?
前巻が最高に面白かったから。
前作を読んで、「もっとこの癖強キャラ・成瀬あかりの物語を読みたい!」という気持ちが止まらなかった。
さらに、2025年12月には第3作『成瀬は都を駆け抜ける』が発売予定。
その前に物語の流れに追いついておこうと思い、今回は第2作を手に取った。
💭 感想・レビュー
アラフォーのおじさんが、好き勝手に感想を述べる。
🌀読後の感想
今回も面白かった。
読書は「1日30分以内」とルールを決めているんだけど、面白すぎて破ってしまった。
40分、60分とページをめくっていたら、あっという間に読了!
- いきなり第2作から読む人は滅多にいないと思うが、第1作の知識がないと楽しめない箇所がある
- 第1作ほどの衝撃はないが、相変わらず“気軽に読める面白さ”がある
- 『成瀬あかり』の強烈キャラは健在
- もっと大学生活が描かれるのかと思ったが、そうでもなかった
- 地元感は減ったけど、それも自然な流れ
- 幼馴染と父ちゃん以外は癖が強いキャラばかり
- 成瀬視点がないぶん、彼女の心情が掴みにくいのが少し残念
- 周囲の人間を描くことで、逆に成瀬の人物像が浮かび上がる構成が印象的だった
- 成瀬視点がないぶん、彼女の心情が掴みにくいのが少し残念だった
- ただ、成瀬の心情が描かれなかったのは、あえての構成なのかもしれない
✅ 良かった点
相変わらず、ストーリーが最後に集約していく構成は良い。
序盤でバラバラに登場した人物たちが、最後に一つにまとまっていく。
こういう展開の小説が、僕は本当に好きなんだと思う。
❤️ 共感した点
今回はなかった。
第1作では、成瀬あかりの「地元愛」に強く共感して、それがこのシリーズを大好きになった理由だった。
でも今回は、その“共感軸”が少し下がった気がする。
ただ、第2作から「地元愛」が消えたわけではない。
成瀬あかりは観光大使として、いろいろな場所で自分の出身地・大津市を広めるために活動している。
この取り組みも、地元愛の表れとしては十分すぎる内容だ。
それでも第1作のように共感を得られなかったのは、
たぶん、観光大使という存在が僕の身近にいないからだと思う。
未知の世界(というか雲の上の存在?)すぎて、想像が追いつかなかった。
観光大使というシチュエーションのせいで、感情移入しづらくなって、
面白さも少し薄まってしまったんだと思う。
💡 学び・気づき
- 滋賀県民が羨ましい
- 読んでいると、たびたび滋賀県や琵琶湖周りの地名・建物名が出てくる。
- 「かけっことびっこ」って何?!知らないから全然脳内再生できない!笑
- 琵琶湖を知っていたら、もっともっと楽しめたはず。
琵琶湖を知らない自分が、ちょっと悔しかった。
- 読んでいると、たびたび滋賀県や琵琶湖周りの地名・建物名が出てくる。
📖 各話ごとの感想
各章の感想を書いていく。
以下で引用する章タイトルは『成瀬は信じた道をいく』(宮島未奈 著)から引用。
感想・批評は僕自身のものである。
📘 第1話 ときめきっ子タイム
視点が小学4年生の女の子という設定が良いね。
精神的に、ちょうど成瀬みたいな“異端児”に憧れる子もいれば、
「ちょっとこの子おかしいかも」と気づく子もいる――まさにその“狭間の年齢”。
「ゼゼカラ」を調査する理由が学校の総合学習というのも良い。
いかにも地元密着型小説という感じで、“成瀬シリーズ”らしいローカルなテーマ。
あぁ、総合学習ってこういうことしたよね、みたいな懐かしさもあって、読んでいてほっこりした。
成瀬の伝説を調査していくと、いろいろな噂が語られる。
前作から少し時間を空けて読む読者にとっても、
「あぁ、成瀬あかりってこんなキャラだったな」と思い出させてくれるリハビリ的な第1話だった。
てか、ひったくり犯を捕まえたという嘘の情報が追加されていて笑った。
もはや都市伝説化しているではないか。
こういうローカル都市伝説っぽい味付けが、“地元密着型小説”らしくて最高に良い。
そして、成瀬信者の北川みらいちゃんが、同級生に推しを否定されて泣いてしまうシーン。
ここで登場する幼馴染・島崎みゆきの言葉が印象的だった。
「成瀬は変じゃない!」と否定するのも友達の形ではあるけど、
彼女はそうではなく「変で、昔はいじめられていた」と事実を伝える。
つまり、「成瀬は一部の人から見れば変人なんだ」という現実を受け入れさせようとする。
この“現実を伝える優しさ”がとても良かった。
妄想や理想を美化せず、「変なものは変」と言える誠実さ。
この作品全体に流れる“やわらかいリアリズム”を象徴していると思う。
この小説は「否定」が少なくて、むしろ“受け流したり、許容したりする”トーンが多い。
そのおかげで読んでいても精神がすり減りにくく、物語の登場人物のように、相手を素直に認めよう――そんな心のゆとりを持ちたくなる。
📘 第2話 成瀬慶彦の憂鬱
今度は誰目線なのだろう?と思ったら、まさかの父親(笑)
本当に「成瀬あかり」の父親らしい性格だった。
あの独特な口癖も“そのうち直るだろう”と思って何もしなかった──その楽観っぷりが、自由奔放な成瀬あかりを育てた証拠だね。
もし厳しい親だったら、絶対に小言をいろいろ言ってただろうな(笑)。
一人暮らしも反対どころか、あっさり受け入れているし。
普通、通学に1時間かかるなら、お金の面でも反対する親のほうが多いと思う。
正直に書く。ディープインパクトが伝説的な競走馬なのは知っていたけど、成瀬あかりと重ねる描写の意図がいまいち理解できなかった。
“偉業を成し遂げる”という比喩?それとも“圧倒的な存在感”の象徴?
動画を撮る受験生が登場したときは「これは後で伏線回収されるのかな?」と思ったけど、そんなことはなかった。
もしかしたら第3作で繋がるのかもしれない。
でも、第1作の“かるた男子”も特に再登場しなかったし、そういう他者に影響されない構成こそが“成瀬シリーズらしさ”なのかもしれない。
見ず知らずの他人との何気ない会話を通して、改めて娘の成長を実感する父親──この描写が、とても良かった。
📘 第3話 やめたいクレーマー
また癖が強いキャラ視点の物語。
名前も「呉間言実」。いくら小説だからって、よくもまあ、こんな名前をつけたなあと呆れてしまった(笑)。
こんな性格の人間は嫌だ…。関わりたくない…。と思いながら読んでいた。
嫌な性格のキャラだな、と思ったせいか、最後まで好きになれず、まさに“坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”状態。
そのせいで、この物語そのものも好きになれなかった。
第5話で彼女が客観的に描かれたときは「ちょっとツンツンしてる人」くらいの印象だったけど、
本人視点で描かれると、まったく違って見える。頭のおかしいクレーマーにしか思えなかった。
もはや精神疾患に近い。万引きが慢性化すると病気になるというが、まさにその“クレーマー版”のようだった。
僕はこれまで100冊以上の本を読んできたけど、こんなに“嫌な性格”の人物を主観視点で描いた小説は初めてだった。
だからこそ、読んでいて初めて感じる種類の“負の感情”が湧き上がった。
これまで、視点キャラの重要性をあまり意識したことがなかったけど、この話で強く実感した。
キャラの性格って、本当に大事なんだな。と学びになった。
主人公には、ある程度の純粋さとか、共感できる倫理観とか、
読者が「一緒に歩ける」と感じられる“許容の範囲”が必要なんだと気づいた。
普段は意識しないけど、物語の構成としてかなり重要な要素なんだな。
📘 第4話 コンビーフはうまい
表紙から想像できる内容だった。個人的には、この話が一番面白かった。
冒頭からまた“濃ゆいキャラ視点”だったので、第3話と同じように不快な気持ちになるのでは?と、読む前から少し身構えてしまった。
でも、この「篠原かれん」の視点は良かった。
注意深く読んでいると、彼女は成瀬を「変人だ」と批判しているばかりではない。
どこかで“自分と同じく選ばれるかもしれない”と予感している。
つまり、彼女自身が“成瀬には選ばれるだけの素質がある”と無意識に認めているわけだ。
本当に嫌な性格のキャラなら、「成瀬は変だから相手にしない」「無視してやろう」と思うはず。
でも、彼女はそうしない。
市議会議員の娘で、容姿も端麗。育ちの良さゆえの素直さがあるのだろう。
成瀬を変だと評価しながらも、どこかで彼女から学ぼうとしたり、良さを認めたりしている。
その点が、前話の“ひねくれ者”呉間言実とは決定的に違っていて、まさに“成長真っ最中の大学生”という印象を受けた。
成瀬が制服を着てきたときも、馬鹿にするのではなく、
「自分も同じ観光大使としてふさわしい姿を見せよう」と、彼女なりの対抗心と向上心を見せる。
漫画『ちはやふる』に、こんなセリフがある。
「本当に高いプライドは、人を地道にさせる。」
漫画『ちはやふる』第○巻(末次由紀/講談社)
まさにこの言葉通りだなと思った。
観光大使としてのプライドがあったからこそ、
観光大使として正しい行動をしている成瀬を素直に認められたのだと思う。
“撮り鉄”という設定も、もっと強烈に活かされるのかと思ったけど、意外と落ち着いた描かれ方だった。
僕の中で「撮り鉄=強烈な性格」というイメージがあるんだなと気づけたのは、ちょっとした発見だった。
この話は、親にレールを敷かれたような人生を歩んできた青年の心を、
成瀬の自由な生き方が変えていく物語だった。
「成瀬の魅力が人を変える」──このシリーズの根底を感じられる話だったと思う。
あと、物語とは関係ないけど、「生成りのワンピース」という表現が出てきた。
正直、「生成り」の意味を知らず、どんな服なのかまったく想像できなかった。
漢字のイメージから“生っぽい色?”“肌が見える服?”と思ったけど、まったく違う(笑)。
ベージュのような柔らかい色を“生成色”というらしい。勉強になった。
初めて見る表現な気がしたけど、これって一般教養なのだろうか?!
もしそうなら、知らなかった自分がちょっと恥ずかしい(笑)
📘 第5話 探さないでください
総集編のような最終話。
物語の構成としては好きなんだけど、残念だったのが“落ち”が予想できてしまったことだった(苦笑)
「成瀬も東京へ行く」「紅白歌合戦のけん玉に参加する」——
どちらも、ぼんやりだけど予想できてしまった。そのせいで、予想外の展開を楽しむ“驚き”の要素が少なかった。
これは年齢を重ねたせいだな、と思った。
若い頃なら、予想できずに「え、そうくるの!?」と驚いていたはずの展開が、
今では経験や知識が増えたぶん、なんとなく先が読めてしまう。
そうなると、物語のサプライズ感が薄れてしまって、
昔ほど“物語に心を揺さぶられる瞬間”が減った気がする。
しょうがないけど、少しだけ寂しい。
大学生くらいでこの話を読んでいたら、
もっと純粋に、展開の意外性を楽しめたんだろうな。
みゆきちゃんが、みらいちゃんのことを「将来が不安になるほどのガチ勢」と評していたくだりは声を出して笑った。ツッコミが的確すぎる(笑)
でも確かに、成瀬をお手本にしていたら、将来ちょっと不安になるよね。
成瀬だからできることであって、凡人には到底マネできない。
だからこそ、凡人代表のみゆきちゃんが冷静に突っ込む構図が最高にいい。
「探さないでください」の理由も、最後のみゆきちゃんの解説でようやく納得。
たしかに真面目な成瀬なら、NHK(準国家機関?笑)の指示を素直に受け入れそうだ。
「四角四面」という表現を初めて知ったけど、まさに成瀬あかりを表す言葉。これから使いたいと思った。
…てか、東京から23:55に滋賀まで帰ってこれるの?!
僕は旅行に行かないから、移動時間の感覚がまったく無いんだよね。
それに僕はテレビもあまり観ないから、紅白歌合戦のけん玉が何時ごろなのかもわからない(笑)
誰か「実際にやってみた!」って人いないかな?!
あとでネットで探してみよう。
📝 まとめ
今作も、『成瀬あかり』を取り巻くキャラたちが織りなす日常劇に、心を穏やかにさせてもらったり、思わず笑わせてもらった。
2025年12月1日発売予定の『成瀬は都を駆け抜ける』も、今から楽しみだ。
今度こそ大学生活が描かれるのか…?
シリーズのフィナーレを、しっかりこの目で見届けたい。

![成瀬は信じた道をいく【電子書籍】[ 宮島未奈 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/rakutenkobo-ebooks/cabinet/2935/2000014092935.jpg?_ex=128x128)

