「夏帆 The Tale of KAHO」読了レビュー|アラフォーになっても村上春樹がわからない

夏帆 The Tale of KAHO, 本, 村上春樹, 小説, 読書, 感想, 読書レビュー 読書
この記事は約11分で読めます。
スポンサーリンク

📖 はじめに

「夏帆 The Tale of KAHO」(著者: 村上春樹さん) の感想。
ただの感想である。考察ではない!ネタバレ込み!!


📘 この本について(概要)

物語の概要と、読んだ理由を簡単にまとめておく。

📝 あらすじ

夏帆という20代の女性が、次々と奇妙な出来事に巻き込まれていく物語。

⏱️ 読了までにかかった時間

  • 9時間47分

村上春樹さんの長編小説を、1か月以内に読み切ったのは初めてかもしれない。

僕は本を読むのが速い方ではないので、発売からあまり間を空けずに最後まで読めたこと自体が、少し珍しかった。

❓ なぜこの本を読んだのか?

村上春樹さんの長編小説は、これまでに9割ほど読んでいるから。

未読なのは『街とその不確かな壁』くらいである。発売されたことに気づくのが遅れ、そのままタイミングを逃して、なんだかんだ今も読めていない。

それ以外の長編小説は、ほぼ読んできた。

そんな中、ネットの投稿で『夏帆 The Tale of KAHO』が発売されることを知った。

久しぶりに発売直後の村上春樹さんの新作を手に取り、新作を楽しみにしている人たちと同じ空気の中で、僕も村上春樹さんワールドを楽しみたいと思い、この本を読み始めた。


💭 感想まとめ

アラフォーのおじさんが好き勝手に感想を述べる。
僕には難しすぎて、本の内容を完全に理解できていないので、著者が読者に伝えたいこととは見当違いなことを書いているかもしれません!

🌀読後の感想

相変わらず、何を伝えたかったのか、よくわからない。

僕は18歳の頃から村上春樹さんの小説を読み始めた。
当時は、「今の自分にはまだ難しいだけで、年齢を重ねれば少しずつ理解できるようになるのだろう」と、なんとなく思っていた。
しかし、アラフォーになった今も、やっぱりよくわからない。

村上春樹さんの作品を、どうすれば理解できるようになるのだろうか。
どんな人生を重ねていけば、あの世界を理解できるようになるのだろうか。
正直、今のところは、人生の終焉を迎える頃になっても、完全に理解できるようになるとは思えない。

それでも、いつかこの「理解できない壁」を越えられるのではないか。
そんな根拠のない期待を自分に抱きながら、ついつい手に取ってしまう。

それが、僕にとっての村上春樹さんの本なのである。

✅ 良かった点

相変わらずの独特な世界観と語り口は、ほかの小説ではなかなか味わえない感覚を与えてくれる。

威圧的ではない。不快でもない。
それなのに、どこか気を抜けないような、ほどよい緊張感がずっと続いている。

この不思議な読み心地は、やはり村上春樹さんの小説ならではだと思う。

❤️ 気になった点

揚げ足取りのようだが、「ラプトップ」という言葉は、さすがに今ではあまり使わないのではないかと思った。
ただ、海外で翻訳されることまで考えれば、日本語として古く感じるかどうかは、そこまで関係ないのだろうか。
気になったのは、それくらいだった。

💡 学び・気づき

気づきは、特にない。
無理やり挙げるなら、何気ない日常は、ある日突然変わってしまうこともある。ということなのだろうか。

一方で、学びはあった。
純粋に、知らない言葉や読めない漢字がマジで多かった。

こんなに知らない言葉が多いのは、僕が活字から離れていたせいなのだろうか。と、少し不安になってしまった。
知らない言葉が出てくるたびに読書の手が止まるのも、なかなかつらかった。

意味を調べず、そのまま読み進めてもよいのだろう。
しかし、僕は意味がわからない言葉を無視したまま読み進めるのが、あまり好きではないのである……。

読めなかった・理解できなかった単語

放遂、カーポート、使い途、宵っ張り(よいっぱり)、等価性、弁舌(べんぜつ)、不肖、放逐(ほうちく)、訴追(そつい)、不定愁訴(ふていしゅうそ)、恰幅(かっぷく)、版図(ハント)、相好(そうごう)、腑分け(ふわけ)、守護天使、オフビート、ジャックケルアックス、浚っている(さらっている)、簒奪、権謀術策、陥穽(かんせい)、ホットフラッシュ、静謐、有用性、淫靡(いんび)、早晩、奸智(かんち)、零落、うがちすぎ、発露(はつろ)、慶賀(けいが)、方策(ほうさく)、きょうかく、惜しむらくは、司直、耐えてなかった、黙考、突端(とったん)、憧憬(しょうけい)、果つる(はつる)、ペイズリーのネクタイ、益虫、輻輳

📖 各話ごとの感想

各章の感想を書いていく。

以下で引用する章タイトルは『夏帆 The Tale of KAHO』(村上春樹 著)から引用。
感想・批評は僕自身のものである。

📘 第1章 夏帆とモーターサイクルの男

冒頭の、モーターサイクルの男とのブラインドデートから、さっそく村上春樹さんワールド全開だった。
読みながら、思わずニヤニヤしてしまった。

1行目から飛び出す、女性を中傷するような意味のわからないセリフ。
そして、超がつくほど回りくどい言い回し。
それらを読んだ瞬間、「ああ、僕は今、村上春樹さんの本を読み始めたんだな」と実感した。

理解できているかどうかは別として、村上春樹さんの世界に入り込んでいく感覚だけは、すぐに戻ってきた。

それにしても、村上春樹さんの主人公は本当に一人っ子率が高い。
村上春樹さん自身も一人っ子だから、心情を書きやすいのだろうか。

僕には兄弟がいるので、そのせいなのか、村上春樹さんの作品に登場する「一人っ子っぽい感覚」を持った主人公には、なかなか完全には埋没できない。

モーターサイクルの男は、村上春樹さんの世界観の中では珍しいタイプのキャラクターに思えた。
村上春樹さんの作品には、白でも黒でもグレーでもないような、輪郭をあえてぼかした文章が多い。
それは中途半端というよりも、どこか優しさとして受け取られている印象がある。

だからこそ、今回のように最初から露骨に毒を吐くキャラクターは珍しく感じた。
しかも、2度目のデートを求めてきたり、主人公の近所をバイクで徘徊しようとしたりする。
ストーカーのようでもあり、変態のようでもあり、これまでの村上春樹作品ではあまり見なかった人種である。

もしかして、今回の村上春樹ワールドは、これまでとは少し違うサスペンス・ミステリー調なのか。
そう思わされる始まりだった。

主人公が書いた「顔のない本」も、少し怖かった。
小説の中の本とはいえ、こんなに不気味な内容の本が本当に売れるのだろうか。と、物語とは関係のないところで少し気になってしまった。

そして、第1章は意外と短かった。

📕 第2章 武蔵境のありくい

第2章は、第1章の倍くらいのページ数になった。

第1章に登場した本と関係しているからなのか、ここでは「アリクイ」と「ジャガー」が登場する。

作中には、「アリクイは離婚しない」といった、僕の知らない知識がいくつも出てきた。
本当にそうなのか?!と思ってChatGPTで調べてみたところ、どうやら嘘らしい。

騙された……。

さらに、「シロアリの瓶詰め」も実在するものだと思っていた。
しかし、Googleで検索してみると、どうやらそんなものも存在しないらしい。

しかも、僕が読むのに時間をかけすぎたせいなのか、すでにGoogle側には情報が反映されていた。

検索結果には、

「『シロアリの瓶詰め』は、村上春樹さんの小説に登場する架空のアイテムです」

みたいな説明まで表示された。

見事に騙された……。

『風の歌を聴け』に登場するデレク・ハートフィールドの時と同じように、また村上春樹さんに騙された気分である。悔しくてしょうがなかった。

その後は完全に疑心暗鬼になった。
「ヴァルター・ベンヤミン」や「ジェーン・オースティン」など、僕の知らない名前が出てくるたびに、
「この人は本当に実在するのか?!」と、いちいち調べるようになってしまった(苦笑)。

叔父のキャラクターも良かった。
今作の中では、一番面白いキャラクターだったと思う。
それにしても、武蔵境をバカにしすぎである(笑)。
著者は、武蔵境に何か個人的な恨みでもあるのだろうか。

僕は武蔵境の場所をよく知らなかったので、叔父の言い方から、八王子やあきる野のような「東京のかなり端の方」を想像していた。

しかし、調べてみたら三鷹の近くで、そこまで都心から離れていないではないか。
そこまで言うほどなのか。と思ってしまった。

物語では、アリクイからの依頼によって、まさかジャガーを刺し殺すことになる。
これは完全に予想外だった。

というか、そもそもジャガーから逃げるために日本へ来たはずなのに、そのジャガーが日本まで追いかけてきたことにも驚いた。どれだけ執念深いんだよ。

アリクイの旦那さんはタバコを吸うらしい。
その情報だけで、僕の頭の中では、なぜかムーミンパパのような雰囲気のアリクイが出来上がってしまった。

そして、主人公はジャガーを刺し殺した。この先、この物語はいったいどうなるのか。
ここまで読んでも、まったく先が読めなかった。

📗 第3章 夏帆とシロアリの女王

今度は、叔父さんが足立区をバカにしすぎていて笑ってしまった。
作者様は、武蔵境だけではなく、足立区にも何か恨みがあるのだろうか(笑)。

物語としては、そろそろモーターサイクルの男に近づいていくのかと思っていた。
しかし、まさか母親がシロアリに乗っ取られているとは……。予想していた方向とは、まったく違う展開だった。

そして、この章で一番驚いたのは、シロアリが蟻ではないという豆知識である。
シロアリの「真社会性」については、以前にハダカデバネズミの本を読んだことがあり、なんとなく知っていた。

そのため、「若い女王に負けてブラジルから逃げてきた」という設定については、意外にもすんなり受け入れることができた。

ただ、相手がシロアリなら、アリクイの夫婦がいれば圧勝じゃん!と思った。
ところが、まさかの「今回は関与できない」という設定である。
シロアリの天敵はアリクイなのだから、せっかくの出番ではないか。
それなのに、アリクイが登場できないという制限を設けるとは、ずいぶん主人公に厳しい設定だな。と笑うしかなかった。

しかも、アリクイの夫婦は、いつの間にかブラジルへ帰っている。
本当になんでもありだな、この世界観は(笑)。

シロアリに乗っ取られた母親の変化も、妙に生々しかった。
下着の趣味が変わったり、以前より社交的になったりする。
怪物のような見た目に変わるわけではなく、日常の中の細かな部分が少しずつ変化しているからこそ、不気味に感じた。

しかも、モーターサイクルの男と交わっているとは……。すごい設定である。
ただ、ここまでに登場した人物をつなげて物語を進めるなら、モーターサイクルの男が関わってくるのは自然なのかもしれない。

そして、いよいよ母親と対峙する。
ここで母親を倒すのかと思ったら、まさかお互いに本音を語り合うだけで終わった。

えっ、決着は終章に持ち越しなの?!
というか、ラスボスはモーターサイクルの男ではなかったの?!

ここでも、僕が想像していた物語とは、まったく違う方向へ進んでいった。

📙 第4章 守護天使、象の卵とスカーレット・ヨハンソン

第4章は、第2章、第3章の倍くらいのページ数があり、まずその長さに驚いた。

あれほど不気味な存在だった「とぎやの主人」も、いつの間にか味方のような立ち位置になっている。
母親を倒すための武器を作ってくれたり、ミソラの物語の中ではミソラを助ける人物として登場したりする。
最初に感じていた不気味さは何だったのか。と思うくらい、すっかり頼れる存在になっていた。

そして、ようやくラスボスだと思っていたモーターサイクルの男と再会する。

待っていました!ここから、いったいどんな展開になるのか。と期待した。

ところが、敵だと思っていたモーターサイクルの男は、自分を「守護天使」だと名乗り始める。

えっ、味方なの?
ここまでの3章分、主人公があれほど怯えていたのは、いったい何だったんだ?!

しかも、主人公の母親とは交際していないという。では、母親が会っていた相手は誰なのか。

モーターサイクルの男が悪者ではなかったのなら、主人公は武蔵境へ引っ越す必要があったのだろうか。
もっとも、「とぎや」へ行くためには、物語上必要だったのかもしれない。

そもそも、モーターサイクルの男を悪者のように話していたのは、アリクイの夫婦である。
ということは、主人公は最初からアリクイの夫婦に騙され、都合よく利用されていただけなのだろうか。

考えれば考えるほど、よくわからなくなってきた。

モーターサイクルの男は、このあとも物語に関わってくるのかと思っていた。
しかし、結局は3回目のデートをしたあと、再び登場することはなかった。

途中で白黒のネコが守護天使として現れたが、あのネコとモーターサイクルの男は同じ存在、という理解でよいのだろうか。

そして、母親を刺す場面は、思っていたよりもあっさりしていた。
ここが物語の大きな決着になると思っていたので、もっと長く描かれるのかと思っていた。

最後に主人公が泣いた理由も、僕にはいまいち理解できなかった。

なぜ、主人公は泣いたのだろうか。
母親を刺したことで、母親は以前とは違う存在になってしまった。もう二度と、これまでと同じ母親には戻らない。
そのことが悲しくて泣いた、という理解で合っているのだろうか。

結局、モーターサイクルの男は再登場しない。
「ミソラの物語」も完成しないまま終わる。

僕はてっきり、「ミソラの物語」が主人公自身や現実の出来事を表す、何かの比喩なのだと思っていた。
しかし、その意味も最後までつかめなかった。

読み終えたあとに残ったのは、物語が終わったという感覚よりも、「結局、あれは何だったのだろう」という疑問の方だった。


📝 まとめ

相変わらず、物語が何を意味していたのかは、まったく理解できなかった。

それでも、村上春樹さん独特の文体や、先の読めない奇抜な世界観は面白かった。現実とはまったく違う世界に入り込めるので、日常から少し離れて息抜きするには、ちょうどよい小説だったと思う。

僕一人では理解できない部分が多いので、これからほかの人の感想や考察もいろいろと読んでみたい。

そこで初めて、「あの場面には、そんな意味があったのか」と気づくこともあるだろう。
自分で読んだときには理解できなかった部分を、ほかの人の解釈を通して少しずつ理解していく。

これが、村上春樹さんの小説を理解できない僕なりの、村上春樹作品の楽しみ方なのである。

村上春樹さんも77歳になり、これから新作をあと何冊読めるのかはわからない。
それでも、新しい作品が発売される限り、これからも理解できないなりに、村上春樹さんの世界を楽しんでいきたい。


タイトルとURLをコピーしました