「好き」を言語化する技術 読書レビュー|ヤバイしか言えない自分を変えるヒント

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📖 はじめに

「「好き」を言語化する技術」(著者: 三宅香帆さん) の感想。
ただの感想である。考察ではない!ネタバレ込み!!

📝 あらすじ

推しを語る文章の「質」を上げるコツが紹介されている。

⏱️ 読了までにかかった時間

  • 5時間45分

メモを取りながら読んでいたので、実質的には4時間45分程度かもしれない。

❓ なぜこの本を読んだのか?

理由は、真剣に悩んでいたからだった。

簡潔に言えば、「文章を書く能力を向上させたかった」からである。

文章が苦手だった

僕は昔から文章を書くのが苦手だった。
高校時代には、大学生の知人に「君の文章はヤバいね(悪い意味で)」と笑われた。

社会人になってからも、上司との評価面談で「何が言いたいのか、まったく伝わらない」と言われた。

それから努力を重ねて、最近は他人から直接指摘を受けることは減った(年齢が30を過ぎたから、周りが気を遣っているだけかもしれないけど…苦笑)。

それでも、自分の中には「文章が苦手だ」というコンプレックスがずっと残っていた。

会話の中で「ヤバイ」と言うたびに、「また『ヤバイ』で済ませた…。語彙の乏しさにガッカリだ…」と内心で自己嫌悪に陥っていた。

「ヤバイ」の頻度を減らしたいとは思っていたが、何も行動はしていなかった。

子どもの言語能力は、親の言語能力に依存する

そんな時、僕に子供が産まれた。

自分は何度か耳にした言葉だったが、そのときふと頭をよぎった。「子どもの言語能力は、親の言語能力に依存する」——そんな話を思い出した。

振り返ってみると、確かに自分の父親も言語化が苦手だった。
父は技術職で、喧嘩をすると「うるさい!」と感情を爆発させるだけで、なぜ怒っているのかを説明できなかった。

そんな父を反面教師にして、自分なりに言葉を学んできたつもりだったが…。
ある日、地元の飲み屋で父の知人に出会い、「あぁ、君がお父さんの息子か!喋り方がソックリだね(笑」と言われて、心が折れそうになった。

やっぱり、親から受け継がれるものはあるんだなと、痛感した出来事だった。

誰から学ぼうか

「ヤバイ」を改善するために、自分なりに調べたり試したりしてきた。

メンタリストDaiGoさん(今はこの名前では活動していない気がする)のサブスク「Dラボ」を聴いて、そこで紹介されていた「感情類語辞典」を読んだりもした。

また、岡田斗司夫さんのYouTubeで配信されていた言語化の動画も観た。

学びや気づきはあったけど、どこかモヤモヤが残った。

それは、どちらも「言語のスペシャリスト」ではない、ということだった。

僕の中でのスペシャリストの定義は、大学や大学院で文学を学び、それを活かして仕事をしている人。

先ほどの二人は理系出身で、論理的でわかりやすい説明をしてくれるけど、文学の観点からみると少し亜流な感じがした(もっとも、亜流だからこそ成功しているのだと思うし、結果が正しい以上、それもまた正解なのだろう)。

三宅香帆さんの存在

そんなとき、YouTubeのリハックを観ていたら「三宅香帆さん」が登場していた。

そういえば、三宅香帆さんは学歴も含めて、まさに「文学」そのものの人だったな、とふと思い出した。

そして、以前に読了した「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」も思い出した。

この本は少しタイトル詐欺っぽい印象もあったけど、言語や読書への愛情がひしひしと伝わってくる一冊だった。

リハック動画や、他のYouTube動画も少しずつ観ていったけど、本当に本を愛している人なのだと実感した。

そして、彼女が書いた「『好き』を言語化する技術」の存在を思い出し、今回手に取ることにした。


💭 感想・レビュー

アラフォーのおじさんが好き勝手に感想を述べる。
心に響いた部分が多すぎて、書きたいことが山ほどあったので、うまくまとめきれないかもしれない。

🌀読後の感想

思ったよりも細かい技術に特化した本ではなかった。
むしろ、文章術のハウツー本というよりも、考え方をシンプルに整理してくれる内容だった。

そのおかげで大まかなコツをつかめたし、多くの気づきを得られたので、個人的な満足度はとても高かった。

  • イメージとしては、もっと「文章の技工」にフォーカスしていると思っていた。
    • 例えば「例文があって、ここは文法的に◯◯だから、△△を使ったほうが良い」といった解説を想像していた。

✅ 良かった点

  • 雛形を得られたのが嬉しい
    • 最近、この年齢になってから気づいたことだが、言語も結局はフレームワーク(構造)を理解し、それにどう当てはめるかが大切なのだと思う。
    • 人間は無意識にフレームワークに当てはめているけど、それを意識的に扱えるようになると格段に楽になる。
    • 感想の細分化も同じで、そのフレームワーク化のコツが今までわからなかったが、この本のおかげで見えてきた。あとは当てはめて実践あるのみだ。

❤️ 共感した点

  • 自分が読んだ本を紹介・引用されていると嬉しい
    • 読書家さんと同じ本を読んでいると、「あ、自分も読書家の仲間入りできているのでは?」と、少し優越感を覚える。
    • 実際は読書家の人だから有名な本を片っ端から読んでいるだけなのだろうけど…(笑)

💡 学び・気づき

  • 「ヤバイ」は悪くない
    • ヤバイとは、言語化できないほど感情が大きく動かされたこと。
    • だから「ヤバイ事に出会えたことを嬉しく思いましょう」と呼びかける著者の考え方は、とても素敵だと思った。
    • 子育てをしていると「ヤバイ」と感じる瞬間は本当に多い。これからは著者の考え方を見習って、「子供がくれた自分を成長させるためのギフト」だと受け止めていこうと思った。
  • ネガティブも描いて良い
    • 「妄想なら書いて良い」との一文にハッとした。
    • 今までの自分には無かった発想で、新しい気づきをもらえた。

📖 各話ごとの感想

各章の感想を書いていく。

以下で引用する章タイトルは『「好き」を言語化する技術』(三宅香帆 著)から引用。
感想・批評は僕自身のものである。

📘 第1章 推しを語ることは、自分の人生を語ること

「クリシェ」という言葉を初めて知った。

SNSでライブに行った後に「B’zのライブ、面白かった!」と投稿しても、どこか薄っぺらく感じてしまい、「これって投稿する意味あるのかな?」と心の中でモヤモヤしていた。

その正体が「クリシェ」という言葉で説明できて、スッキリした。

僕は文章を細分化するのが面倒で避けてしまう癖があり、結果的にクリシェを連発してしまう。これからはできるだけ意識して避ける努力をしていきたい。

また「感想を書くには妄想力が必要」と書かれていた。

自分のブログを見返すと、妄想ばかりで構成されている。だから「あぁ、自分のやり方は完全に間違ってはいなかったんだ」と少し安心できたし、むしろ「自分の方向性は正しい」と思えて自信にもつながった。

📘 第2章 推しを語る前の準備

「面白さ」の定義が書かれていて、僕にとっては目からウロコの情報だった。

面白さとは「共感」と「驚き」らしい。

本の中で紹介されていたこの定義が、自分の長年のモヤモヤを解消してくれて、一番大きな気づきだった。


10年以上前のことだ。伯父と酒を飲んでいる時に「仕事は面白いけど楽しくない。面白いと楽しいは違う」と言われたことがある。

当時20代の僕は、その言葉の意味をまったく理解できなかった。

ただ、仕事でつらいことがあったときに「仕事は楽しくない」という伯父の言葉を思い出して、なんとか踏ん張れたことはあった。

一方で、仕事中に感情が大きく揺さぶられる場面があり、「これが仕事の面白さってやつなのかな?」と考えながら働いていた。

10年以上仕事を続けるうちに、体感としてはなんとなく伯父の言葉の意味がわかってきた。

ただ、それを言語化できなくて、ここ数年ずっと悩んでいた。


この本を読んで「あぁ、そうかもしれない」と納得できた。

僕の仕事では「共感」はあまりないけれど、「驚き」は多い。

例えば僕はモノづくりの仕事をしている。

モノづくりの現場では、”変な不具合”を発見すると「うわ、こんなパターンが存在するのか?!」と未知の現象に出会って驚かされる。

新人を指導している時も、予想とはまったく違う行動をされて「うわ、自分の指示が悪いとこんな行動をとっちゃうのか?!」と驚かされる。

追い込まれている状況だと「つらい」と感じるけれど、冷静になれば「予想外のことが起きるって面白いな」と思えることが多々あった。

そんな経験から、著者の「面白い=共感と驚き」という定義に深く共感した。

もちろん伯父に直接確認したわけではないから、本当に伯父が伝えたかった意味とは違うかもしれない。

それでも、自分なりの答えを導き出せたことに達成感があった。長年、言語化できなくてもやもやしていた感情が解放されたように感じた。

📘 第3章 推しの素晴らしさをしゃべる

書くときは「誰に伝えたいか」を明確にすることが大切だと書かれていた。

ビジネス用語で言えば「ペルソナ」だと思う。

5〜6年前に読んだ『沈黙のWebライティング』にも似たような内容があったのを思い出した。

自分はブログを書くときにターゲットをしっかり決めていないな…と反省した。

また、これは文章だけでなく会話も同じだと思う。

社会人になってから多くの人と会話をしてきた。
その中で、やり取りが噛み合わなかったり、相手が退屈そうな反応をしたことが何度もあった。
今振り返ると、それは自分が相手との距離感をうまく調整できず、会話の運びが下手だったからだと思う。

📘 第5章 推しの素晴らしさを文章に書く

書き出しのテクニックについて触れられていた。

この本を手に取る前から「きっと文章の技術的なコツがたくさん紹介されているはず」と予想していたが、そのイメージに一番近かったのがこの章だったと思う。

実際に読んでみると難しかった。これはもう努力と実践の積み重ねが必要なのだろう。

書いた文章を修正するクセについても語られていたが、まさに自分の弱点を突かれた気分だった。僕はどうしても「書いて満足してしまう」タイプで、手直しが疎かになる。

このブログもそうだが、基本的には書き終えたらそのまま公開することが多かった。最近は修正のコツを少し学んだので、こまめに直すようになったけど、2,3年前の自分の記事を読み返すと、誤字脱字や不自然な文章が多すぎて恥ずかしくなる。

本書にあった「玄人と素人の違いは修正の数にある」という言葉を読んで、まさに自分は修正をしてこなかった典型的な素人だと痛感した。

では、なぜ修正を避けてしまうのか?と考えた。

おそらく、文章を修正するということは「過去の自分と向き合うこと」だからだと思う。下手だった部分や恥ずかしい言い回しを突きつけられると、嫌な気持ちや暗い感情がよみがえる。

自分の過去と向き合う作業は、精神を摩耗させて大きなエネルギーを消費する。だから多くの人は無意識に避けてしまう。

しかし、あえて向き合うことで自分を客観視でき、これから進むべき道を取捨選択する力が養われる。

だからこそ、過去の自分と向き合えるエネルギーを持った人が成長し、最終的には成功していくのだろうな。と改めて思った。

📘 おまけ 推しの素晴らしさを語るためのQ&A

おまけというよりも、説明書のトラブルシューティングに近い印象だった。

このQ&Aを読むと自然に本編に誘導されてしまう。著者がたくさんの本を読んできたからこそできる、本編へ導くテクニックなのかな?と勘ぐってしまった。

その中で第2章に触れられていて、相手に話を聞いてもらえる条件は「共感できる話」か「新しい情報」と書かれていた。ここで、自分の中の長年の疑問に答えが見つかった。

僕は30代後半になり、昔の知人(職場や学生時代の友人)と再会することがたまにある。昔は一緒にいて面白い相手だったのに、久しぶりに会うと「なんかつまらないな」と感じることがあった(おそらく相手も同じように感じているのだろうけど)。

別に嫌いになったわけではないのに、会う頻度が減るとどうして退屈に感じるのか?と考えていた。

しかし著者の言う条件に当てはめると、原因がスッキリと理解できた。

たとえば昔の職場の人と会うと、まず「共有できる最新情報」がない。勤めていれば「AさんがBさんに失礼なこと言ったらしいよ!」と新しい話が入ってきて、えっ本当に?と驚きがある。そこから「Aさんなら言いそうだね」と共感もできる。

でも、環境が違えばそういう情報は入らない。代わりにするのは昔話。共感はあっても新情報がない。

だからこそ、昔の知人との会話はつまらなく感じる確率が高いのだろう。

趣味が合う人や、仕事以外でもつながりのある人なら再会しても盛り上がるけど、本当に仕事だけのつながりだった人に再会すると盛り上がらないのは、このせいだと思った。

📘 あとがき

この本を書いた理由について書かれていた。

僕は読む前から、勝手に著者の人物像を思い描き、勝手に内容を予想していた。とても本好きで、読書狂な著者だから、

「推しの感想を書く人たちのレベルを底上げして、世の中に品質の高い感想があふれるようにして、その感想を自分が楽しむため!」

つまり私利私欲を満たすための一冊だろう、と考えていた。

漫画に例えるなら、よくある展開で、強キャラが弱いキャラに修行をつけてあげて、
「どうして僕なんかに修行してくれるんですか?」と尋ねられると、
「将来のライバルになってくれたほうがワクワクして楽しいから」
と答える──そんなイメージをしていた。

でも、実際はもっと真面目で、僕の予想とはまったく違っていた。

確かに言葉はナイフのようなものだ。このナイフを巧みに振るったのが、2025年夏の参議院選挙だったのかもしれない。国民の不安を言葉で切り取り、共鳴させて振り回すことで、一定層の支持を得られたのではないか?と、ふと考えさせられた。

著者の言う通り、言葉は人を責める武器にもなるし、自分を守る武器にもなる。

だからこそ、この本で学んだことを活かして、文章力を鍛え、自分を守るための武器を手に入れたいと思った。
(著者の意図とは少しズレているかもしれないが、それもまた一つの学び方だろう。)

📌 こんな人におすすめ

  • 書くことへの抵抗を減らしたい人
  • SNSに投稿してみたいけど躊躇している人
  • 「好き」をもっと言葉で表現したい人

📝 まとめ

学びを重視して「実用的な本だろう」と思って読み始めたけど、結果的には「気づき」のほうが多かった。

読んでいく中で、自分が抱えていた悩みや長年のモヤモヤが解消されていく感覚があって、とても有意義だった。

ただ、一度読んだだけでは理解が追いつかない部分も多いし、時間が経てば忘れてしまう。だからこそ、書くことに行き詰まったときには、定期的に読み返して活かしたいと思う。

特に、これからは以下を重点的に意識して取り組んでいきたい。

  • 記事を書く前にフレームワークを埋める
    • ペルソナ(想定する読者・記事のゴール)
  • 感想の粒度をもっと細かくする
  • 書き終わったら必ず訂正する

この3つを繰り返すことで、自分の文章が少しずつ変わっていくはずだ。
(余談:試しにこの記事を清書したら1時間かかった…。訂正って大変)

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